千葉県最新入試動向 千葉県の「内申インフレ」と私立推薦基準アップの深い関係

「うちの子、内申は先輩の頃より高いのに、先輩がとれた併願推薦校がとれない」——2026年度(令和8年度)入試で、実際にこうしたケースが起きていました。

一見バラバラに見える「内申点が取りやすくなった」という現象と、「私立の推薦基準が一斉に上がった」「併願推薦(B推薦)が廃止された」という現象は、実はひとつながりの話です。今回はこの4つの動きを一本の線でつなげて解説します。

現象①:千葉県では内申点が「インフレ」している

まず土台にあるのが、千葉県内の内申点の底上げです。中学3年生の9教科5段階評定の県平均は、令和2年度の3.52から令和7年度には3.59まで上昇。

きっかけは2021年度(令和3年度)入試から始まった制度変更です。それまで千葉県には、中学校ごとの評定の甘い・辛いのばらつきを補正する「調整措置」がありましたが、これが廃止され各中学がつけた評定がそのまま入試に使われるようになりました。もともと評定を高めにつける傾向のあった中学校の内申が補正なしで反映されるようになり、県全体の平均を押し上げたと考えられています。

現象②:そもそも千葉県は全国的に見ても評定が高め

このインフレには「下地」があります。都道府県別に評定を比較したデータによると、9教科を45点満点に換算した評定平均は千葉県が約3.6と全国でも高く、東京都は約3.3、愛知県は約3.2です。千葉県では「5」または「4」がつく生徒の割合が5割近くに達しており、相対評価(正規分布で割合が決まっていた)時代と比べると、かなり高評価寄りに偏っています。

実際、偏差値で比べても、偏差値60前後の千葉の生徒の5科内申平均は23.5前後、東京は20.8前後と3ポイントほどの差があります。もともと高めだった千葉県の評定が、調整措置の廃止でさらに高くなっているのです。

現象③:私立側は推薦基準を一斉に引き上げた

一方、受け入れる私立高校側では逆の動きが起きています。2026年度入試で推薦の内申基準を引き上げた(加点条件の変更等を含む)千葉県内の私立高校は、塾向け入試説明会資料によると12校にのぼります。

八千代松陰/東葉/東京学館船橋/昭和学院/東京学館浦安/光英VERITAS/流通経済大付柏/我孫子二階堂/中央学院/愛国四街道/東京学館/木更津総合

加点条件の廃止・厳格化や試験日の削減という形でも実質的なハードルが上がっています。

現象④:行き着く先が「併願推薦(B推薦)の廃止」

基準アップのさらに先にあるのが、併願推薦そのものの廃止です。東葉、流通経済大付柏に加え、千葉英和も普通科の併願推薦にあたる事前相談を廃止。敬愛学園や千葉明徳など、近年「併願推薦の廃止・縮小」に動いた学校は他にもあります。

併願推薦は「内申が基準に届いていれば、公立第一志望のまま私立を押さえられる」仕組みです。つまり内申点だけを信用して合格を約束する制度であり、内申というものさしの信頼性が揺らげば、真っ先に維持できなくなる仕組みでもあります。

4つをつなぐと見えてくる構図

ここまでの話をつなげると、こうなります。

  1. 内申のインフレ(調整措置廃止+もともと高めの評定)で、「5科20」「9科36」といった数字が示す学力の中身が以前より曖昧になった。
  2. 同時に、高校無償化の拡充(2026年度から私立向け支援の所得制限撤廃・支給上限457,200円)で私立第一志望の家庭が増え、人気校に志願者が集中した。
  3. 学校側は選べる立場になり、基準アップ・加点厳格化で出願層を絞り込んだ。
  4. それでも内申だけでは学力を測りきれないため、内申だけで合格を約束する併願推薦を廃止する学校が出てきた。

実際、基準を上げた学校では受験者数が大きく動きました。八千代松陰は前期①の応募者が1,206人→992人、東葉は前期受験者が1,306人→861人(実質倍率は1.26倍→1.86倍に上昇)、流通経済大付柏は前期単願が175人→70人(募集定員も281人→131人に縮小)。

基準アップは受験者を減らして楽にするためではなく、入学者の学力層を引き上げるための絞り込みとして機能しています。

「内申が上がったのに使えない」パラドックス

この構図が受験生にもたらすのが、冒頭のパラドックスです。県平均の評定が上がっているということは、わが子の内申が上がっていても、周りの受験生の内申も同じように上がっているということ。そこに基準アップが重なれば、手持ちの内申の「実質的な価値」はむしろ目減りします。数字の上では先輩より高い内申を持っていても、先輩が使えた併願先が使えない——これが今の千葉県で現実に起きていることです。

受験生・保護者はどう動けばいいか

  • 内申の「絶対値」ではなく「相対的な位置」で考える:県平均が上がっている以上、「先輩の頃なら十分だった数字」は判断材料になりません。学年・地域の中での位置づけで見ることが大切です。
  • 「昨年の基準」「先輩の実績」を信じない:基準は毎年動き、加点条件や試験日という見えにくい形でも変わります。夏以降に各校が発表する最新の募集要項・個別相談会で必ず確認を。
  • 中3の内申を最後まで取り切る:千葉県の私立推薦は中3の内申だけで判定する学校がほとんど。前期(1学期)で足りなくても、その後もう一度出される内申で基準に届けば間に合うので、後期中間テストまでは気を抜かず取り組む姿勢が必要です。
  • 加点条件は早めに準備する:英検・漢検などの加点は取得タイミングが遅いと出願に間に合いません。遅くとも秋までに取得を。
  • 併願推薦ありきの受験プランを見直す:「私立は併願推薦のみで」と考えず、基準に届かない場合のコース変更や一般入試での挑戦も含め、選択肢を複数持っておきましょう。